「ウェルドナット(溶接ナット)」を使ったスポット溶接がおススメの理由
ウェルドナットとは
ウェルドナット(ウエルドナット、溶接ナット、Weld Nut)とは、ボルト締結に用いるナットの一種で、板金に溶接で固定されることを前提とした専用ナットです。
通常のナットはボルトと組み合わせて使用する際に、ナットをレンチなどで締結して保持する必要がありますが、ウェルドナットは片側からの作業だけでボルトを確実に締結できるため、自動車産業、電気機器、鉄道車両、建設機械、さらには産業用ロボットやOA機器など、量産性と信頼性が求められる分野で広く採用されています。
ここでは、そのウェルドナットについて、詳しく解説していきます。
ウェルドナットの溶接方法
ウェルドナットは板金に溶接することを前提としたナットですが、その溶接方法にはいくつかの種類があります。
スポット溶接
スポット溶接は、ナットの突起部分に電流を流して母材と接合する溶接方法で、高速かつ量産に向くという特徴があります。
当社都留では「溶接焼けがない」スポット溶接加工が可能なため、後処理時間が短縮され、さらなるスピードアップも図れます。
焼けないスポット溶接!ウェルドナットスポット溶接(高速電源スポット溶接機:向洋技研NK-08-KG-EZ)
アーク溶接 、 MIG溶接 、TIG溶接
アーク溶接・MIG溶接・TIG溶接は、いずれも「アーク放電の熱を利用して金属を溶かして接合する」溶接方法です。しかしこの3つの溶接は、電極やシールドガスの有無、操作性や仕上がり自体にも違いがあります。
アーク溶接は、設備が比較的安価で持ち運びやすいという特徴があるため、屋外作業や多少の風がある場所でも使用が可能という利点があります。しかし、スパッタやスラグの除去が必要であり、その仕上がりも技術者の腕に左右されやすいため、熟練の溶接者の存在が不可欠です。
対してMIG溶接はスラグが出ないため後処理が少なく、またアークが安定しやすいため、初心者にも扱いやすいという特徴があります。そして作業スピードが速く、大量生産向き。ただ、風の影響を受けやすいため、屋外作業には不向きです。
TIG溶接は、溶接部の仕上がりが美しく、高品質な溶接が行えます。特に薄板やステンレス、アルミの溶接に最適です。ただ、溶接速度は比較的遅く、そして熟練の技が必要になります。
ウェルドナットの種類
ウェルドナットには、その用途に応じて様々な形状がありますが、実際のシェアは六角タイプが主流を占めています。
その理由としては、「溶接時に位置ずれしにくく、固定しやすい」「円形タイプ等と比較すると回り止め効果が高い」「工具(スパナやソケットレンチなど)との相性が良く、作業者が扱いやすい」などがあげられます。
そして六角タイプが主流である理由は「作業性・強度・規格性・コスト」のバランスに最も優れているという点も重要です。
ただ、ウェルドナットを使用したい製品によっては、六角タイプよりも適した形状のウェルドナットがもちろんあります。以下、代表的なウェルドナットと、その特徴を解説していきます。
六角タイプ
ウェルドナットの中でも、六角形状を持つ「六角ウェルドナット」は、自動車・建設機械・産業機械などでよく使用されます。六角形にすることで工具とのかみ合いが良く、強度やトルク伝達性(回転力を伝える際の効率や性能)に優れているという特徴があります。
六角ウェルドナットには、
- 突起付き(基本型・溶接性重視)
- パイロット付き(位置決め容易)
- フランジ付き(締付安定)
- オフセット型(スペース対応)
- クローズド型(密閉性確保)
- タブ付き(溶接安定性向上)
角型タイプ
角型(スクエア)ウェルドナットも六角ナットと同様に、 回り止め性や位置決め性を重視する場合に用いられます。代表的な種類と用途は六角ナットと同様ですが、角型のメリットとしては、
- 六角よりも面積が広いため 溶接強度が高い
- 回転トルクに対して強く、回り止め効果が高い
丸型タイプ
丸型タイプのウェルドナットは、溶接性と自動組立性を重視する場合に使用されることが多いナットです。
その特徴は、座面が円形のため突起を持たせることで均一な溶接が可能であり、溶接しやすいこと。六角や角型に比べてコンパクトで、狭いスペースに配置しやすいこと。そして部品供給(ボルトフィーダーやナットフィーダー)との相性が良いため、大量生産ラインなどで多用されています。
しかし、六角や角型と比べるとトルクに対する回り止め効果は劣るため、溶接強度や突起形状で補うことが多いナットです。
丸型タイプのウェルドナットには、
- 突起付き(標準・量産向き)
- パイロット付き(位置決め性重視)
- フランジ付き(強度・ゆるみ防止)
- クローズド型(密閉性重視)
- 段付き型(精度・組立効率重視)
ウェルドナットの形状別 比較表
| 形状 | 主な特徴 | 主な用途 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 六角型 | 六角形外形、突起付きやパイロット付きなど種類豊富 | 自動車部品、建設機械、産業機械全般 |
・工具との相性良い ・トルク伝達性が高い ・量産性が高い |
・角部があるためスペース制約が大きい |
| 角型 | 四角形外形、フランジやパイロット付きもあり | フレーム、補強部材、建設機械 |
・溶接面積が広く強度が高い ・回り止め効果大 |
・デザイン自由度がやや低い ・自動供給には不向き |
| 丸型 | 円形外形、自動供給性に優れる | 自動車、家電、精密機器 |
・自動組立ラインに最適 ・コンパクトで省スペース |
・回り止め効果が弱い ・高トルクには不向き |
ウェルドナットを使用した製品例
ウェルドナットは薄板構造物に強固なねじ穴を作れることから幅広い分野で使われており、特に以下の分野でポピュラーに使用されています。
- 自動車 → フレーム・シート・パネル固定
- 建設機械 → フレーム・キャビン取付部
- 産業機械 → 制御盤・装置カバー
- 半導体 → 外装パネル・内部固定部
- 鉄道・航空機 → 内装部材の固定
- 材質:SUS 304、SUS304 M4六角ウェルドナット
- 板厚:1.0t
- 公差:一般公差範囲内
- ロット:1~1,000個
まとめ
板金に溶接で固定するウェルドナットは、幅広い分野で使用されています。 そしてウェルドナットには用途によって使い分けられる豊富な種類があります。
六角型 → 標準的で汎用性が高く、まず検討される形状
角型 → 強度・回り止め性が重要なフレーム・構造部向け
丸型 → 自動組立・省スペース・大量生産向け
そして都留では「溶接焼けがない」ウェルドナットのスポット溶接加工が可能です。 ウェルドナット溶接のご用命は、ぜひ都留にご相談ください。
