板金豆知識

スポット溶接の品質不良「4大条件とは」

2010年5月14日 公開  / 2025年12月18日 更新
技術

スポット溶接シリーズ その5です。

基礎編 5

スポット溶接の品質は、①電流 ②加圧 ③通電時間 ④電極(チップ)という「4大条件」に大きく左右されます。これらが適正から外れると、剥がれや焼け、穴あきなどの不良につながります。
この記事では、スポット溶接の基礎から4大条件のポイント、起こりがちな不良と原因までを体系的に解説します。

そもそもスポット溶接とは?

スポット溶接は、金属同士を重ね合わせ、電極で挟んで電流を流し、金属の抵抗発熱によって局所的に溶かして接合する溶接方法です。アークを発生させる溶接とは異なり、母材そのものが発熱源になる「抵抗溶接」に分類されます。

精密部品・家電・金属家具・自動車のボディなど、高速で大量の接合が必要な分野で広く採用されています

※スポット溶接の仕組みや特徴、メリット・デメリットを知りたい方は、こちらをお読みください: スポット溶接「剥がれの原因と対策」まとめ

スポット溶接の品質不良を防ぐための4大条件

スポット溶接の品質を決定する重要因子は次の4つです。

1.電流
2.加圧
3.通電時間
4.電極(チップ)

どれか1つでも外れると品質不良のリスクが高まります。

① 電流 ― 電流量が不足すると溶着不良に

スポット溶接において電流は、ナゲットを形成するための熱源です。適正電流が確保されなければ、十分に溶融が進まず不良が発生します。

電流不足による主な不良

  • ナゲット形成不足
    →溶け込みが浅く強度不足に
  • 剥離(ピール試験で割れ)
    →接合が不完全
  • 不均一なナゲット径

適正電流の考え方

  • 材質(SPCC / SUS / アルミ等)
  • 板厚
  • 電極先端径

などを基に設定します。とくに板厚が厚いほど高電流が必要になります。また、電流が強すぎても焼けや穴あきの原因となるため、電流単体ではなく「4条件のバランス」で調整することが不可欠です。

※参考:スポット溶接の品質不良「電流値不足の原因」

② 加圧 ― 加圧不足はスパッタや接触不良の原因に

加圧力は、電極で母材を押さえつける力です。適正な加圧は、溶接部の電気抵抗・通電効率・熱の発生に大きく影響します。

加圧不足で起こる不良

  • スパッタ多発
  • 接触不良による電流不足
  • 板の浮きによるナゲット偏り

加圧が弱いと、接触面の抵抗が大きくなりスパッタが発生しやすくなります。逆に加圧が強すぎると電流が流れにくくなり、ナゲットが小さくなることがあります。

※参考:スポット溶接の品質不良「加圧設定」

③ 通電時間 ― 長すぎても短すぎてもNG

通電時間は、電流を流す時間(通電パルスの長さ)です。短すぎれば熱量が不足し、長すぎれば焼けや穴あきにつながります。

通電時間が短い場合の不良

  • ナゲット形成不足
  • 剥離

通電時間が長い場合の不良

  • 焼け(外観不良)
  • 穴あき
  • 熱影響による強度劣化

板厚や材質に応じて、電流と合わせて総熱量(電流×時間)の適正値を設定する必要があります。

※参考:スポット溶接の品質不良「通電時間」

④ 電極(チップ) ― ナゲット径と電流密度のバランスが重要

電極はスポット溶接品質を左右する最重要パーツです。

電極先端径が変化すると品質が不安定になる理由

電極は使用するうちに摩耗し、先端径が広がることで電流密度が低下します。これにより、

  • ナゲット径が小さくなる
  • 電流が逃げる
  • 溶接が不安定になる

といった不良が起こります。

電極摩耗対策

  • 定期的なドレッサー処理
  • 適正な加圧設定
  • 冷却水の流量管理
  • 目視・計測による先端径の管理

電極管理は「溶接条件管理」の基礎であり、外注先の管理レベルを測る重要なポイントとなります。

※参考:スポット溶接の品質不良「電極・ナゲット硬さ」

4大条件が崩れると発生する主な品質不良類

以下は、スポット溶接でよく発生する不良と、その主な原因をまとめた表です。

不良名 主な原因 影響する条件
剥がれ(ピール強度不足) 熱量不足・電流不足・板浮き 電流 / 加圧 / 時間
ナゲット不足 熱量不足・電極摩耗・通電時間不足 電流 / 時間 / 電極
スパッタ多発 加圧不足・電極の汚れ・接触不良 加圧 / 電極
焼け 通電時間過多・電流過多 電流 / 時間
穴あき 熱量過多・加圧不足 電流 / 時間 / 加圧
不良名 剥がれ(ピール強度不足) ナゲット不足 スパッタ多発 焼け 穴あき
主な原因 熱量不足・電流不足・板浮き 熱量不足・電極摩耗・通電時間不足 加圧不足・電極の汚れ・接触不良 通電時間過多・電流過多 熱量過多・加圧不足
影響する条件 電流 / 加圧 / 時間 電流 / 時間 / 電極M5 加圧 / 電極 電流 / 時間 電流 / 時間 / 加圧

このように、1つの不良には複数の原因が絡むことが多く、4大条件の総合的な管理が不可欠であることが分かります。

まとめ|4大条件を理解して品質トラブルを未然に防ぐ

スポット溶接はシンプルな工法に見えて、品質は「4大条件」の管理によって大きく左右されます。

①電流:熱量の源であり、最も重要
②加圧:接触安定とスパッタ抑制に関係
③通電時間:熱量バランスを決める
④電極(チップ):電流密度をコントロールする要素

これらの基礎知識を理解しておけば、不良の原因究明や対策検討も進めやすくなります。

品質不良を未然に防ぎ、安定した生産を実現するためには、4大条件の把握が重要です。

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