スポット溶接の品質不良「4大条件とは」
スポット溶接シリーズ その5です。
基礎編 5
スポット溶接の品質は、①電流 ②加圧 ③通電時間 ④電極(チップ)という「4大条件」に大きく左右されます。これらが適正から外れると、剥がれや焼け、穴あきなどの不良につながります。
この記事では、スポット溶接の基礎から4大条件のポイント、起こりがちな不良と原因までを体系的に解説します。
そもそもスポット溶接とは?
スポット溶接は、金属同士を重ね合わせ、電極で挟んで電流を流し、金属の抵抗発熱によって局所的に溶かして接合する溶接方法です。アークを発生させる溶接とは異なり、母材そのものが発熱源になる「抵抗溶接」に分類されます。
精密部品・家電・金属家具・自動車のボディなど、高速で大量の接合が必要な分野で広く採用されています
※スポット溶接の仕組みや特徴、メリット・デメリットを知りたい方は、こちらをお読みください: スポット溶接「剥がれの原因と対策」まとめ
スポット溶接の品質不良を防ぐための4大条件
スポット溶接の品質を決定する重要因子は次の4つです。
1.電流
2.加圧
3.通電時間
4.電極(チップ)
どれか1つでも外れると品質不良のリスクが高まります。
① 電流 ― 電流量が不足すると溶着不良に
スポット溶接において電流は、ナゲットを形成するための熱源です。適正電流が確保されなければ、十分に溶融が進まず不良が発生します。
電流不足による主な不良
- ナゲット形成不足
→溶け込みが浅く強度不足に - 剥離(ピール試験で割れ)
→接合が不完全 - 不均一なナゲット径
適正電流の考え方
- 材質(SPCC / SUS / アルミ等)
- 板厚
- 電極先端径
などを基に設定します。とくに板厚が厚いほど高電流が必要になります。また、電流が強すぎても焼けや穴あきの原因となるため、電流単体ではなく「4条件のバランス」で調整することが不可欠です。
② 加圧 ― 加圧不足はスパッタや接触不良の原因に
加圧力は、電極で母材を押さえつける力です。適正な加圧は、溶接部の電気抵抗・通電効率・熱の発生に大きく影響します。
加圧不足で起こる不良
- スパッタ多発
- 接触不良による電流不足
- 板の浮きによるナゲット偏り
加圧が弱いと、接触面の抵抗が大きくなりスパッタが発生しやすくなります。逆に加圧が強すぎると電流が流れにくくなり、ナゲットが小さくなることがあります。
③ 通電時間 ― 長すぎても短すぎてもNG
通電時間は、電流を流す時間(通電パルスの長さ)です。短すぎれば熱量が不足し、長すぎれば焼けや穴あきにつながります。
通電時間が短い場合の不良
- ナゲット形成不足
- 剥離
通電時間が長い場合の不良
- 焼け(外観不良)
- 穴あき
- 熱影響による強度劣化
板厚や材質に応じて、電流と合わせて総熱量(電流×時間)の適正値を設定する必要があります。
④ 電極(チップ) ― ナゲット径と電流密度のバランスが重要
電極はスポット溶接品質を左右する最重要パーツです。
電極先端径が変化すると品質が不安定になる理由
電極は使用するうちに摩耗し、先端径が広がることで電流密度が低下します。これにより、
- ナゲット径が小さくなる
- 電流が逃げる
- 溶接が不安定になる
といった不良が起こります。
電極摩耗対策
- 定期的なドレッサー処理
- 適正な加圧設定
- 冷却水の流量管理
- 目視・計測による先端径の管理
電極管理は「溶接条件管理」の基礎であり、外注先の管理レベルを測る重要なポイントとなります。
4大条件が崩れると発生する主な品質不良類
以下は、スポット溶接でよく発生する不良と、その主な原因をまとめた表です。
| 不良名 | 主な原因 | 影響する条件 |
|---|---|---|
| 剥がれ(ピール強度不足) | 熱量不足・電流不足・板浮き | 電流 / 加圧 / 時間 |
| ナゲット不足 | 熱量不足・電極摩耗・通電時間不足 | 電流 / 時間 / 電極 |
| スパッタ多発 | 加圧不足・電極の汚れ・接触不良 | 加圧 / 電極 |
| 焼け | 通電時間過多・電流過多 | 電流 / 時間 |
| 穴あき | 熱量過多・加圧不足 | 電流 / 時間 / 加圧 |
| 不良名 | 剥がれ(ピール強度不足) | ナゲット不足 | スパッタ多発 | 焼け | 穴あき |
|---|---|---|---|---|---|
| 主な原因 | 熱量不足・電流不足・板浮き | 熱量不足・電極摩耗・通電時間不足 | 加圧不足・電極の汚れ・接触不良 | 通電時間過多・電流過多 | 熱量過多・加圧不足 |
| 影響する条件 | 電流 / 加圧 / 時間 | 電流 / 時間 / 電極M5 | 加圧 / 電極 | 電流 / 時間 | 電流 / 時間 / 加圧 |
このように、1つの不良には複数の原因が絡むことが多く、4大条件の総合的な管理が不可欠であることが分かります。
まとめ|4大条件を理解して品質トラブルを未然に防ぐ
スポット溶接はシンプルな工法に見えて、品質は「4大条件」の管理によって大きく左右されます。
①電流:熱量の源であり、最も重要
②加圧:接触安定とスパッタ抑制に関係
③通電時間:熱量バランスを決める
④電極(チップ):電流密度をコントロールする要素
これらの基礎知識を理解しておけば、不良の原因究明や対策検討も進めやすくなります。
品質不良を未然に防ぎ、安定した生産を実現するためには、4大条件の把握が重要です。
